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東京高等裁判所 昭和60年(ラ)240号 決定 1985年10月08日

抗告人 株式会社 大廣製作所

右代表者代表取締役 廣田清

右訴訟代理人弁護士 仙波安太郎

同 後藤秀継

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消し、債務者が第三債務者に対して有する原決定添付別紙差押債権目録記載の債権を差し押さえるとの裁判を求める。」というにあり、その理由は別紙のとおりである。

二  よって審案するに、民事執行法一九三条一項にいう「担保権の存在を証明する文書」とは、同法一八一条一項、一九〇条等関連法条の法意に徴すると、当該文書自体から担保権の存在が直接かつ明確に証明されるものでなければならないと解され、本件のように動産売買の先取特権による物上代位に基づいて債権の差押えを求めるには、当該動産の売買を証する文書として、「売買契約書」又は「注文書・請書」その他これらに準ずる程度に証明度の高い文書を提出することが必要であると解すべきである。

そこで、右観点に立って、抗告人提出の各文書がその主張に係る物件の売買の事実を証明するに足りるか否かを検討してみると、各売上伝票はいずれも債務者の関与なく抗告人が一方的に作成した文書であり、物品受領書、配送受領票は、抗告人主張の物件の各一部が抗告人から第三債務者に直送された事実を証する文書にすぎず、代理店契約書、同変更契約書は、いずれも抗告人と債務者間に継続的な売買の基本契約が存在することを証明するにとどまり、証明書は、それぞれ、第三債務者、債務者の作成名義ではあっても、事後に本件売買の契約締結行為とは無関係に作成された文書にすぎず、いずれも、本件売買契約の事実を直接かつ明確に証明する文書ということはできないし、その余の債権仮差押決定正本等の文書が本件動産売買契約の存在を証明する文書というに足りないことは明らかである。

三  そうすると、抗告人の債権差押えの申立を却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 髙野耕一 裁判官 南新吾 成田喜達)

<以下省略>

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